祖母の死
翌日、近くの病院に戻ってきた祖母をお見舞いに行くと、廊下で叔母が泣いています。
まさかと思って近付くと、祖母がもう息をしていないと言います。今朝「おはよう」と言って、落ち着いていたというから安心していたのに。
でも、もう心臓も止まり、瞳孔も開いてしまったという祖母の額は、まだとても温かかいものでした。
祖父もそうでしたが、祖母も、祖父が建て、家族7人で暮らした家で最期を迎えることはできませんでした。
祖母は骨粗鬆症でした。10年ほど前、くしゃみで肋骨が折れたといって入院してからは、ほとんどを施設で過ごし、ほんの少しの間、実家に戻るといった暮らしをしていましたが、車椅子が通れない廊下の先にあるトイレやお風呂に行くための苦労を、私は考えたことがありませんでした。杖をついて、たくさんの時間と体力を使って苦労しながら用を足すことの大変さ。家を建てた33年前は、考えもしなかったことでしょう。 今、こうして家を建てるときに祖母の死に遭って、改めて、この家で老いることができるのか、考える機会を得ました。
私たちの家は、段差がなく、車椅子が通れない廊下もなく、1階だけでも生活できる空間が、ちゃんとあります。電気のスイッチも低いです。生まれ育ったこの土地で、新しいこの家で、生きていきたいと思います。